023 「外断熱」の敗北?

023 「外断熱」の敗北?

023 「外断熱」の敗北?

去る2008年10月31日、外断熱業界に衝撃が走りました。

 

「康和地所、民事再生法を申し立て」

 

このかわら版をお読みの方はご存知だと思いますが、康和地所とは2003年に首都圏で初めて外断熱工法の分譲マンションを販売したデペロッパーで、当シェーンバウムのコンサルティングをしてくれた会社です。
康和地所の物件に対する評価の高さは購入者のブログ等からうかがい知ることができますし、それと同時に日本の外断熱工法の普及に並々ならぬ尽力をしてきた会社でもあります。

 

その後、再生の道を模索していた康和地所ですが、この100年に一度と言われる不況の中、スポンサーとの話がまとまらず、2009年1月末日を持って再生の道を断たれることになりました。
康和地所という会社がなくなることが決まったのです。。。

 

部外者の私に、康和地所が行き詰った原因を語ることはできません。
ただ、康和地所よりも規模が大きく、さらには上場しているようなデベロッパーがバタバタと倒れている現状をみると、やはり時代の波に呑みこまれたという他ないのかも知れません。
マンションを作り続け売り続けなくては生き残れないデベロッパー、特に資本が少なく負債に頼る部分の大きいデベロッパーにとっては、この半年の急激な経済の冷え込みは致命傷になったのでしょう。
(もちろん、それより先に姉歯事件に端を発する建築許可の煩雑化がデベロッパーの体力を奪っていったのも確かですが)

 

ところが、ネット上の掲示板などを見ていると、特に外断熱懐疑論者からそうした世界情勢を無視し、康和地所の倒産だけをあげつらって、「康和地所の倒産」=「外断熱は工法として劣っている」といった論調の書込みが見受けられます。

 

こうした意見に対し、私は声を大にして言いたい。
断じて「否」であると。

 

会社の倒産とはあくまで会社の経営の話であって、外断熱という工法の優劣を語るものではありません。
それだけ「康和地所=外断熱」というイメージが強かったということでもあるのかも知れませんが、外断熱工法が駄目だから康和地所が倒産したというのは、あまりにも乱暴な理屈です。

 

「でも、外断熱が本当に優れた工法だったら、購入者に受け入れられて飛ぶように売れ、康和地所が破綻することもなかったのでは?」という声も出てきそうです。
この意見に対しても、「売れる以上に借金をして作ったら破綻する」という経営上の理由がつけられると思いますが、とは言え、優れた工法にも関らず外断熱の認知が急速に進まないことにはそれなりの理由がありそうです。

外断熱はビジネスに向いていない?

これは、外断熱マンションの大家として私が個人的に思っていることですが。。。

 

「外断熱はビジネスに向いていない……???」

 

「安く仕入れて高く売る」のが商売の基本。
外断熱でマンションを作る以上、従来のマンションより「安く仕入れる」は(少なくとも現状では)難しい状態。
一方、外断熱だから「高く売れる」かというと、外断熱の認知度が低い現在ではこれもキビしいのが現実です。

 

正直なところ、シェーンバウムも建設費は従来のマンションに比べて1〜2割高!
では、従来のマンションよりもその分家賃を高く取れるかと言えば、需要過多になっている現在の賃貸マンション市場では、やはりそれも難しい。
「同じような条件で同じような家賃だったら、外断熱に住んでみませんか?」
というのが今のシェーンバウムの基本スタンス。
従来のマンションと同じ条件ならば、認知度は低くても外断熱は十分に競争力を持つと信じているからです。

 

以前、かわら版「003」でも触れたように、外断熱は「耐久性」という利点を持っています。
これは資産価値を大幅に高めているという点で、大家にとっては大きなメリットです。
ただ、そうした長期的な視点でなければ、「高く仕入れて普通に売る」という外断熱賃貸マンションはあまり効率の良い商売ではありません。

 

さらに、康和地所のような外断熱分譲マンションの場合は、「高く仕入れて高く売る」が基本姿勢になってきます。
もちろん本当に良いものなら高く買う人もいますが(事実、康和地所のマンションを買って大満足の人も大勢います)、数をさばくのは難しい。
「作り続けて売り続ける」が宿命のデベロッパーにとってはかなり不利な戦いを強いられることになります。
だからこそ、大手デベロッパーは外断熱に手を出さない。
購入者に新たな選択肢を示すことなく、自分たちに都合の良い「安く仕入れて高く売る」を続けているのです。

それでも未来は「外断熱」にある!

シェーンバウムが竣工して、今日でちょうど二年になります。
理屈だけでなく実際に体感した私は、今まで以上に自信を持って断言できます。
「外断熱は優れた工法」だと。
しかし、残念なことにその良さはなかなか伝わりにくい。
立地の良さや価格が安いなどの分かりやすい利点に比べると、“地味”と言ってもいいかもしれません。
住んでみれば必ずその良さは分かると思いますし、実際にシェーンバウムの入居者の方からも、
「冬にほとんどエアコンを使わなかった!」
「夏も冬もよく眠れるようになった!」
等、外断熱の良さを実感したというお言葉をいただいています。
ただこれは、住んでみてこその話。賃貸なら試しに住んでみることもできますが、分譲ではそれも難しい。
その意味では、同じ外断熱マンションでも「賃貸」より「分譲」のほうが商売としてより難しいのかも知れません。

 

康和地所の倒産については、いろいろな意味で「残念」としかいいようがありません。
特にマンション購入希望者に「外断熱」という選択肢が減ってしまうこと、それと同時に外断熱の良さが世の中に広まるのが遅れることは、個人にとっても地球にとっても大きな痛手だと思います。
外断熱の普及を目標としているシェーンバウムにとっても、大事な仲間を失ってしまいました。。。

 

ただ、康和地所という会社はなくなってしまいますが、これまで同社が培ってきた外断熱に対するノウハウはなんとか次代に伝えて欲しい。
部外者の勝手な願いですが心底そう思いますし、私が知り合った康和地所の皆さんならそれができると信じています。
そしていつの日か、外断熱の価値が世の中に認められ、その「康和地所の遺伝子」が大きく花開く。。。そんな日が来ることを願ってやみません。

 

(2009/02/22 文責:佐野)