025 外断熱復活の兆し?

025 外断熱復活の兆し?

025 外断熱復活の兆し?

一年ぶりの更新となってしまいました、シェーンバウム『かわら版』。
今回は先日私が参加した、あるパネルディスカッションのご報告をしたいと思います。

 

突然ですが、「外断熱推進会議」という団体をご存知でしょうか。
この団体は、外断熱の普及を目的として作られた特定非営利活動法人で、以前かわら版「022」でもご紹介した「外断熱からはじまるマンション選び!」の著者である堀内正純氏が中心となって2002年に設立されました。

 

「外断熱推進会議」は一般法人(いわゆる“会社”)ではなく、特定“非営利”活動法人であるところがポイント。
つまり自社の商品を売って利益をあげるために外断熱をアピールするのではなく、あくまで純粋に外断熱の良さを普及させることを目的とした団体なのです。

 

この「外断熱推進会議」が、この夏から「ソトエコ」なるキャンペーンを開始しました。
これは、建築業界だけでなくもっと一般の人たちに外断熱の良さをアピールしようというもので、「外断熱推進会議」という堅苦しい名前を前面に出さず、「ソトエコ」という親しみやすい名前で一般の方に興味を持ってもらおうという狙いのキャンペーンです。
去る2010年7月31日、「ソトエコ」が活動の一環として、ソトエコクラブミーティングを開催しました。
ノンフィクション作家の山岡淳一郎さん(その著書で私を外断熱に引きあわせてくれた人です)の基調講演に加えて、実際に外断熱の建物に住んでいる人たちでパネルディスカッションを行うという内容でした。
そのパネリストの一人として、私が参加することになったのです。

動機が不純?

実は、これまで私は「外断熱推進会議」の存在こそ知っていたものの、積極的に自分から近づかないようにしていました。
「もっと外断熱の良さを多くの人に知ってほしい」という気持ちは同じでも、外断熱マンションを経営する、言い換えれば、外断熱で商売している私は、“非営利”活動法人に関るには甚だ動機が不純な存在ですので(笑)。

 

ただ、今回はその「外断熱賃貸マンションのオーナー」としての意見を聞きたいというお話でしたし、非常にお世話になった方からのご依頼でもありましたので、お引き受けすることにしました。
もちろん、私に外断熱への扉を開いてくれた山岡さんにお会いしてみたいというミーハーな気持ちもありましたが。

 

当日のソトエコミーティングの様子はソトエコのHPに掲載されると思いますが、私の他にも実際に分譲外断熱マンションに住んでいる方や既存マンションを外断熱に改修された方も参加され、外断熱に関して貴重な意見交換の場となりました。
そんな中で私としては自分の不純な存在を少し意識して、外断熱の住み心地的なお話よりも、「商売としての外断熱」に重点をおいて意見を述べさせていただきました。
特に「こんなに良いものなのに、なぜ外断熱の普及が進まないのか?」という議題の時には、外断熱を商品として扱うことの難しさを実体験を通してお話しました。
(商売としての外断熱に関しての私の意見は、かわら版「023」をご参照ください)

「商品」としての外断熱の魅力は?

“非営利”活動法人の集まりで、私が敢えて商売のお話をしたのは、やはり宗教でもない限り、何かを普及させるにはなにかしらの経済的な背景が必要だと思うからです。
(まあ、宗教の方がお金がかかる場合もありますが!)
ありていに言ってしまえば、資本主義という現代社会に於いては、どんなに素晴らしいものであっても、それ自体に商品としての魅力がなければ普及しないだろうということです。

 

少し乱暴な言い方をしてしまえば、「外断熱の魅力をどう伝えるか」は、そのまま「外断熱をどう売っていくか」ということでもあると思います。
賃貸なのか分譲なのか、あるいは建設業者なのかと、商売によってその方法論は違ってきますが、結局のところ「外断熱の良さが伝われば商品が売れる」わけですから、逆の視点から見れば「商品を売っていけば外断熱が普及していく」という言い方もできるわけです。
その意味で「外断熱の上手な売り方」が外断熱の普及に大きな役割を担うことは間違いありません。
私自身も、「外断熱の上手な売り方」を見つけようと試行錯誤の毎日です。
内見にいらっしゃる方は、まずは間取りや立地条件などを気にされますので、そんな方にいきなり断熱材の話をしてもドン引きされるだけです(笑)。
ですから私の場合は、最初から声を大にして「外断熱って良いんですよ!」と説明したくなるのをグッと我慢して、その方の反応をみながら外断熱の数ある利点の中から興味をひきそうな点を説明していきます。
例えば、つい忘れがちですが分厚い断熱材がもたらす「静かさ」などは、ほとんどの方が反応する大きな利点です。
そこを入口に興味を持っていただけるようであれば、外断熱の良さをどんどんアピールしていくことにしています。

 

もし「外断熱の上手な売り方」が見つかれば、外断熱はあっという間に普及することでしょう。
売れる商品と判断した大手メーカーが続々と市場に参戦し、大規模な広告活動を仕掛け、外断熱という言葉が一般の方の間に急速に広がるのは想像に難くありません。

 

ただ、個人的な意見ですが、外断熱は「値段が高くても良いものは売れる」という時代に則した商品であり、昨今の経済状況では売れにくい商品であるのもまた確かです。
まず経済状況が回復すること、そして、外断熱の上手な売り方を構築すること。
この二つの条件が揃えば、外断熱の普及は決して難しいものではないと思います。


外断熱の新しい可能性

さて、ここまでは「外断熱で商売している」私の意見。
当然、違ったアプローチの仕方もあるはずです。

 

今回ソトコトミーティングに参加させていただいて一番感銘を受けたのが、古いマンションを外断熱改修した事例でした。
(詳しくは、外断熱推進会議のサイトをご覧ください)
全10棟146戸という大規模な改修を、それもあまり前例がない外断熱で行った裏には、住環境委員会の方々の大変なご苦労があったと思います。
デベロッパーによって華々しく売り出される新築マンションとは対照的に、住民の方々の手で行われる改修という非常に地味な作業ではありますが、外断熱改修を終えた住民の方々が、外断熱の性能の驚き、笑顔で暮らしている様子を想像すると、こちらまでつい頬が緩んでしまいます。
山岡さんの著書にもありますが、これからますます既存マンションの老朽化が進んでいきます。
そして建替えを巡り住民同士が対立し、強制的に退去させられるようなケースが今後増えていくでしょう。
こうした外断熱改修の事例は、そんな現況に一筋の光をさすものかも知れません。

 

以前、私は商品としての外断熱を「地味」と表現しました。
確かな特長を持った商品ではありますが、間取りや立地条件などの点に比べると、パッと目に見えるものではないだけに華やかさがないということです。
そんな外断熱は、実は「派手」な新築マンションよりも「地味」な改修作業の方が相性がいいのかもしれません(笑)。
外断熱が急速に広まる方法は、前述の通り大手メーカーが参加して大々的な宣伝を行うことだと思いますが、今後増えるであろうマンションの改修作業の場に於いて、外断熱がじわりじわりと存在感を増してくることは十分に考えられます。
もしかしたら、外断熱は建築方法としてではなく改修方法として先に知られるようになるかも。。。
今回のお話を聞いてそんなことを思ってしまいました。

 

ともあれ、たとえどんなに時間がかかろうとも、建築方法と改修方法のどちらが先になるにしても、外断熱はいずれ普及するものだと私は信じています。
それがどんな推移をたどるのかはまだ分かりませんが、微力&動機が不純ながら(笑)私も外断熱の普及に協力していきたいと思っています。

 

(2010/09/12 文責:佐野)