024 ある夏の日の実験

024 ある夏の日の実験

024 ある夏の日の実験

いやぁ〜、大変ご無沙汰しております、シェーンバウム『かわら版』。
久々の更新となる今回は、ある夏の日に行った実験のお話です。

 

 

まずは、上の写真@をご覧ください。
この写真は、ある8月の暑い日に温度計を二つ並べて撮影したものです。
場所は当時空室だったシェーンバウムの704号室。
時刻は温度計にも表示されているように、午前11時13分です。

 

パッと見れば、その違いにお気付きになるでしょう。
そうです、上段の時刻も下段の湿度も同じ数字なのに、中段の温度だけが明らかに違う数値を示しています。
向かって左側の温度計が「35.0℃」、それに対し右側は「30.9℃」。その差は実に「4.1℃」もあります。

 

なぜ、同じ場所にある温度計が違う気温を示すのか?
もちろん、どちらかが壊れているわけではありません。
実はこの二つの温度計、同じ部屋に並んで置いてありますが、それぞれが別の場所の気温を測っているのです。

二つの温度差のヒミツは…

 

写真@の周辺が分かるように撮影したのが、写真Aです。
それぞれの温度計の左下から、なにやら意味ありげなコードが出ているのがお分かりになるかと思います。
右側のコードはそのまま温度計の前に束ねられいますが、その先端にある丸い部分、ここが気温を測るセンサーになっています。
つまり、この二つの温度計は本体部分で気温を測るのではなく、コードの先にあるセンサーで気温を測る、言い換えれば、本体がどこにあろうとセンサーがある場所の気温を表示する温度計なのです。

 

では、左側の温度計のセンサーはどこにあるのか?
写真Bをご覧ください。実は左側のコードは掃き出し窓の隙間から外に出て、ベランダの手すりに引っ掛けられています。
つまりの左側の温度計が示す「35.0℃」とは外の気温、対して右側の温度計のセンサーは室内にありますから、「30.9℃」は室内の気温ということになります。

 

タネも仕掛けもありません!

「あら、クーラーが効いたお部屋ねぇ」と思ったあなた、実に素直な感想だと思います。
しかし、外気より4℃以上低いこの部屋が、実は真夏に窓を閉め切った部屋だったとしたら、ちょっとビックリしませんか?

 

従来の内断熱の建物であれば、真夏に窓を閉めきった部屋は外気より高温になるのが普通です。
夏に部屋探しをしたことがある方なら、部屋に入った瞬間モヤ〜とした熱気包まれた経験があることでしょう。
部屋が暑くなる理由は簡単で、外側のコンクリートが太陽光にさらされることで熱を持ち、さながら“石焼ビビンバの釜”のように部屋をせっせと温めてくれるからです。
さらに、熱くなったコンクリートはその蓄熱性をいかんなく発揮し、夜になって外が涼しくなっても部屋を高温のままキープしてしまいます。
涼しい夜道を気持ちよく歩いて帰宅したら、部屋の中があまりに暑いので驚いたなんてことは珍しくありません。

 

なぜ外断熱マンションでは、真夏でも閉めきった部屋の中のほうが涼しいのか?
それは、これまでかわら版で何度も触れてきた通り、建物を支えるコンクリートを味方につけているからです。
違う言い方をすれば、コンクリートの蓄熱性を上手に活用しているからです。

 

少し外断熱のおさらいをしてみましょう。
コンクリートの躯体を断熱材ですっぽりくるんでしまうのが外断熱。
そのため外気の影響を受けにくく、建物内部の温度を一定に保つという性質を持っています。
例えるなら、マンション版の“魔法瓶”と言ったところでしょうか。

 

前述のように夏は“石焼ビビンバの釜”になってしまう内断熱マンションに対し、“魔法瓶”外断熱マンションのコンクリートは一定の温度を保っているため、部屋の温度を上げることはありません。
シェーンバウムに住んでいる方なら誰でも体験していることですが、真夏に外から帰ってくると一階のエントランスに入っただけで「涼」を感じることができます。
(もちろんエントランスにクーラーをかけているわけではありません)
イメージとしては、夏にトンネルに入ったときのヒヤッ!とするあの感じ、暑い場所から急に巨大な冷たいものに近づいたあの感じを思い浮かべていただければ近いと思います。

 

建物全体で温度が均一化していますから(これを“温度のバリアフリー”なんて呼んだりします)、
涼しいのは居室だけではありません。浴室もトイレも、果ては共用廊下までも同じ温度を保っています。
夏場に内見にいらっしゃった方には、一通り外断熱のご説明をした上で、帰り際に共用廊下の温度を確認していただくようにしています。
そうすることによって、クーラーで部屋の中だけを冷やした訳ではないことを納得していただき、外断熱の効果を少しでも実感していただけるようにしています。

クーラーをかけるとどうなるか?

ちなみに。。。
「とか言って、本当は上の写真もクーラーつけて部屋の中を涼しくしてるんでしょ」
という疑り深い方もなかにはいらっしゃるかも知れません(笑)。
そんな方のために、試しにクーラーをつけてみました。
クーラーの温度設定は「27℃」。そのまま10分ほどおいた状態が下の写真Cです。

 

 

外気の温度はほとんど変わらず「34.9℃」、それに対し部屋の温度は「29.5℃」まで下がりました。
10分間で「1.4℃」も下がったことになります。
仮に内断熱マンションでまったく同じ間取りの部屋があったとしたら、この温度設定と時間でここまで気温は下がらなかったと思います。
くどいようですが、なにせ内断熱マンションは“石焼ビビンバの釜”ですから(笑)!

 

そんな内断熱とは対照的に、“魔法瓶”の外断熱マンションではコンクリートの蓄熱性が味方になってくれます。
一度クーラーの冷気をとりこんだコンクリートはヒヤッ!とした感じをキープ。
クーラーをきったとしてもすぐに部屋の温度があがるなんてことはありません。
「寝る前にクーラーをきったら夜中に暑くて目が覚めた!」なんていう熱帯夜とは遠い存在です。

 

もし同じ構造のマンションを同じ立地条件で二つ建てて、片方を内断熱、もう片方を外断熱で施工したとしたら、興味深い比較データが山ほどとれるのは間違いありません。
残念ながら、このご時勢にそんな酔狂なことを行う企業や個人があるとは思えませんが、こういう時こそ採算度外視のあの機関、そう、「国」の出番ではないでしょうか。

 

“石焼ビビンバの釜”の内断熱 vs“魔法瓶”の外断熱。

 

本気で温室ガスを25%削減しようと思っているのなら、この実験はきっと役に立つはずですよ。
どーですか? 鳩山さん!

 

(2009/09/13 文責:佐野)