最近では、住宅の標準設備となったエアコン。
これ一台で冷房も暖房もこなす優れものは、いまや日本人の生活に欠かせないものになりました。
さて、このエアコン。
正式名称は「エア・コンディショナー」。日本語に直せば「空調機」となります。
読んで字のごとく、空気(つまり温度と湿度)を調整する機械ですが、外断熱マンションで使った場合、この効果は“空気=エア”だけにはとどまりません。
今回のかわら版は、エアコンから出発して、外断熱における暖房の考え方に迫ります。
<図1>は毎度お馴染みの「内断熱マンション」の構造図です。
この部屋でエアコンの暖房をつけたとしましょう。
エアコンの吹き出し口から暖かい風が出てきて、部屋の空気を暖めてくれます。
しかし、居室の内側に断熱材を張り込んであるため、暖かさはコンクリートに伝わらずエアコンが暖めてくれるのはあくまでも“空気=エア”だけです。このことは次の三つの欠点を生み出します。
@断熱材の外側にあるコンクリートが冷たい外気でキンキンに冷えているので、暖房効率が悪い。
A空気しか暖めないので、換気をすると暖房効果がゼロに戻る。
B暖房のスイッチを切ると、冷えたコンクリートが熱を奪い、すぐに部屋の温度が下がる。
その結果、
「高めの設定温度でフル稼働させるが、設定温度にならない」
↓
「フル稼働させたら部屋の空気が悪くなったので、換気した」
↓
「換気したら部屋の温度が元にもどったので、またフル稼働させる」
↓
「寝るときにスイッチを切ったら、あっという間に寒くなった」
↓
「朝、凍えた体でまたフル稼働させる」
という悪循環にはまってしまいます。
“エアコン”なんだから“空気”しか暖めないのは当たり前かもしれませんが、これでは住んでいる人の体にもサイフにも、もちろん地球にもやさしくありません。
対する「外断熱マンション」の構造図は<図2>のようになります。
「外断熱マンション」の場合、話はもっとシンプルです。
まず、外断熱の大前提として、
「コンクリートが断熱材でくるまれているので、冷たい外気の影響を受けない」
という条件があります。これは言い換えれば、
「コンクリートは室内の温度に同調する」
ということでもあります。
では、エアコンのスイッチを入れてみましょう。
「コンクリートが冷たくないので、すぐに空気は設定温度まで温まる」
↓
「温まった空気は、接しているコンクリートに熱を移し、コンクリートまで温まる」
↓
「コンクリートには蓄熱性があるので、エアコンのスイッチを切っても、暖かさが持続する」
ねっ? シンプルでしょう。
さらには「報道関係者向けの内覧会」でも実験したように(※かわら版「017」参照)、換気をしたとしても、温まったコンクリートがまた部屋の温度を上げてくれるので、エアコンの電気代が無駄になることもありません。
簡単に言ってしまえば、従来の内断熱マンションでは、
「部屋を暖める=空気を暖める」
だったものが、外断熱マンションでは、
「部屋を暖める=建物(コンクリート)を暖める」
という発想に変わったということです。
この発想の転換は、暖房機器に対する考え方にも影響してきます。
例えば、「オイルヒーター」。
中のオイルを電気で暖めることで部屋の温度を上げるこの機械は、ストーブのように燃焼によって部屋の空気をよごすことなく、またエアコンのように風を起こしてホコリを巻き上げることのない快適な暖房機器として知られています。
ただ、このオイルヒーターには大きな欠点があります。
その欠点とは即ち、「空気に対して暖房性能が低い」ということです。
実は我が家には以前からオイルヒーターがあるのですが、従来の内断熱マンションに住んでいた時には、冬も押入れから出ることはありませんでした。
正直、私も「こんなじんわり温かいだけのものがなんの役にたつんだ!」と思っていました(笑)。
そのオイルヒーターが、外断熱マンションでは大活躍です。
無理に空気を暖めようとせず、壁の近くに置いてコンクリートに熱を伝えることに目を向けた結果、内断熱マンションでは全く役に立たなかったオイルヒーターが、外断熱の部屋の温度をどんどん上げてくれます。
この冬、オイルヒーターのおかげで我が家はエアコンのスイッチを入れることはなさそうです。
おっと、“大活躍”と言っても実際には一日に数時間つけるだけですからね。
それだけで大抵の日は快適に過ごせてしまえます。
電気代も内断熱マンションに住んでいた時に比べて大幅ダウン!
体にもサイフにも、そして地球にもやさしい外断熱マンションの暮らし。
ぜひ一度体験してみてください。
(2008/01/27 文責:佐野)